日本刀の勉強 #1
染みについて。
刀が制作された瞬間は下記に示した刃紋の様にはっきりと刃紋が見えます
しかしながら刃こぼれや錆が原因で研磨を致しますと当然その刃紋は研磨され
第一段階で匂口が深くなります。
この匂口が深くなるという事は刀の中の刃紋が研磨されるのです。
第二段階に至り再度研磨した場合は刃紋は匂口が更に深くなり最初期のように
はっきりとは紋は見えず柔らかなぼーっとした部分となります。
第三段階では更に刀の内部を研磨しますので
表面の刃紋はボヤーットした刃紋となります。
第4段階に研磨をすると殆ど刃紋の中は白い霞がかかった状態となり
刃紋の働きは全く見えない状況となるのです。この状態を染みというのです。
特に備前物は染みが出易く備前三郎国宗などはかなり刃染みが出易いのです
理由は焼き入れ温度が低いからなのです。
相州伝は焼き入れ温度が高くはっきりとは刃紋を作るためかなり研ぎ減っても刃紋が残るのです。
この染みが出た刀は元には戻りませんので薬品を使用する事で刃を浮かす手段を取り入れる研磨師もおります。
これは現在日本刀が鑑賞するという点から必ずしも駄目だとは言い切れない部分があります。
素人は決して行ってはいけません。
画像を見て下さい
染みに付いて説明しましょう。
1 この絵は刀を制作した状態の良い作品で健全であり刃紋もはっきりとしております。
当然鎌倉時代以前の作品もこのような状態であったのです。
2 はやや研ぎ減ってきた状態の作品で匂口はやや深く柔らかな雰囲気の刃紋となります。
3この絵は刀がかなり研磨され染みがひどくなり刃紋の状態がボヤーと以前は
丁字乱れであろうと推測される段階です。
4の絵は焼き入れした時の刀の内部の刃紋です。
焼き入れは刀の制作者が刃紋を作りその刀を焼き入れを行います。
更に焼き入れをした刀を水に入れて急冷させると刃紋の部分は固い鋼になるのです。
研磨をする事で刃紋がはっきりと刀身に出来ます。
研磨をするとはっきりと刃紋がでて参ります。4番の絵の如くは紋は表面だけではなく
刀の中心に向って焼き入れた刃紋が作られますが
表面ははっきりと中へ入るに従ってぼけた状態となるのです。
この染みは直す事が出来ませんので購入される場合は良く見て下さい。
以前にも当社で委託販売で預かった長光の在銘で
特別保存がついた3番目の絵に該当する作品を販売していた事があります。
価格は大変高価でしたがネットでご覧になった長光を見て若い方が購入しようと店に入ってきました。
すっかりと気に入り購入の意志を私に伝えました。
もしこのお客様が商売人であるならば売っていたでしょうが
あまり知識のない30代の若さの方であった為売却を断りました。
しぶしぶ購入されずに返られましたが後日売却された事を知り再び来店され、
何故私に売らなかったのだとかなりキツい表情で詰め寄りましたので
私は染みに付いて説明致しました。この長光は特別保存刀剣に合格しておりました。
その長光を購入されたのは業者でした。
お客様はそれでは私に何か紹介して欲しいといわれ
室町時代末期の備前物で重要刀剣に指定されている品物を紹介し
彼はその刀を購入し何本かの名品を購入されました。
私が恐れるのはもし長光を購入していたならば毎日の様にその刀を鑑賞し
これが有名な鎌倉時代最上作の刀として鑑賞しさらに鑑賞した長光と
同様な刀を探すのに違いないと考えたからなのです。しかし染みがあるからといって
無価値ではありません。 鎌倉時代の最上作で刀剣の王者に一人なのです。